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SFTSウイルス感染症

巷では新型コロナウイルスの話題で持ちきりですが、
今回、動物と人の共通感染症(ズーノーシス)である【SFTSウイルス感染症】についてお伝えしたいと思います。
(新型コロナウイルスについて東京都獣医師会から配布されたお知らせはこちらをご覧ください
新型コロナウイルスについてのおしらせ

農工大でのセミナーや獣医内科学アカデミーで聴講した話をまとめます。
(まとめの割に長くとても読みにくいです、すみません)

😺病原体
日本名で【重症熱性血小板減少症候群ウイルス】
英語では【Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus】
というウイルスです。2011年に報告されました。
頭文字を取り【SFTSウイルス】とされています。
学名は【ブニヤウイルス目フェヌイウイルス科バンヤンウイルス属フアイヤンシャン・バンヤンウイルス】であり、節足動物体内でも増殖することが出来るウイルスの仲間に属します。

😺感染経路と分布
この【SFTSウイルス】は主にマダニが媒介しますが、マダニに刺咬されるだけでなく、発症動物の体液(血液・唾液等)や排泄物などを介しても感染する事が分かっています。
体液などを介しての経路として【猫→人、犬→人、人→人】が確認されています。
発生は西日本が中心ですが、神奈川県で野生のタヌキからSFTSウイルス抗体が、また東北や北海道に生息するマダニからSFTSウイルスが、検出されています。

😺感染動物
野生動物やその他さまざまな動物においてこのウイルスの抗体が確認され感染したことがわかっています。
感染した証拠(抗体)が検出されているものの野生動物が発症するのかどうかはまだ不明です。
現在、発症が認められている動物は【猫・犬・チーター・人】です。
特にこの中でも【猫と人】は重症化する事が分かってきました。(なぜなのかはまだわかりません)

😺猫の病態と経過
猫の致死率は50-60%です。
1歳以下の若齢から発症例があります。
猫は主にマダニに吸血されて感染します。
感染猫のうちほとんどが、外出をしている猫もしくは同居猫が外出している猫です。
飼い主さんが最初に気付く臨床症状は【食欲不振】【活動性低下】【消化器症状(主に嘔吐)】です。
病院での身体検査所見で【発熱】【黄疸】が多く見られます。
血液検査では【血小板減少】【白血球減少】その他異常が認められます。
確定診断は主に【SFTSウイルス遺伝子の検出】です。これには血清その他材料を採取し、大学や研究施設に送る必要があります。
また、【SFTSウイルス抗体検査】も行う場合があります。
有効な治療法は確立されておらず輸液・制吐剤などの支持療法が中心です。今のところ、犬猫用の抗SFTSウイルス薬はありません。
(犬は症例が少ないですが、発症した場合症状等は猫と同様、致死率は40%以上です)

😺人の病態と経過
人の致死率は6~27%です。
発症は、中高齢の方に多いことがわかっています。
人も猫と同じくマダニ刺咬による感染がほとんどですが、発症猫を介して飼い主さんに感染したケースがあります。
実際に発症動物を診察した獣医師への感染も報告されています。中国において、人から人へと感染した事例もあります。
人の症状は猫と同じく【発熱】が主でありそれに伴う【倦怠感】【頭痛】【筋肉痛】【悪寒】などが見られます。
また、【消化器症状】が出現する場合が多いようです。一般の風邪やインフルエンザで見られる喉の痛みや鼻漏・咳などは少ないそうです。
血液検査所見や確定診断その他は、猫とほぼ同じです。
国立感染症研究所HPもご覧ください

猫人ともに、感染が疑われた時点で隔離入院となります。
人の潜伏期間が10-14日ですので、犬猫も同様と思われます。
症状がみられなくともマダニ刺咬後や感染動物に接触後14日間は体温測定などの観察が必要です。

以上です。
【SFTSウイルス感染症】は伴侶動物と暮らす多くの方にぜひ知っていただきたいです。
極度に怖がる必要はありませんが、山歩きには長袖長ズボン装備、マダニ予防、室内飼育の検討、など感染防御についての再考の一端となれば幸いです。
※発熱や消化器症状のある、外出する猫ちゃんが来院された場合、スタッフおよび患者さまともに【ゴーグル】【手袋】【ガウン】などの防護具を装備し診察させていただきます。ご承知くださいませ。

UPDATE : 2020.03.01 kimura Category. : ニュース
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